監修者

株式会社インシュアラ 代表取締役
金松 裕基
株式会社インシュアラ(信頼の解体レスキュー)の代表取締役社長であり、同サイトの監修者を務める金松裕基氏。 建物解体、内装解体、店舗解体を主な事業とし、その豊富な経験と専門知識を活かして「信頼」のサービスを牽引しています。代表として、また業界の専門家として、安全かつ高品質な解体工事の実現に尽力し、顧客からの厚い信頼を得ています。


下水道が通っていない地域の家や、古い家を解体するとき、敷地に浄化槽が埋まっていることがあります。建物と一緒に壊せばよいと思われがちですが、浄化槽は中に汚泥が残っているうえ、使うのをやめたら届出が必要な設備です。順番を間違えると、余計な費用がかかったり、法律に触れたりすることがあります。
この記事では、浄化槽法と環境行政を担う県や市の案内をもとに、浄化槽を廃止するときの手順、廃止届の期限と提出先、撤去費用が決まる要素、解体工事とまとめて頼むときの見積もりの見方を整理します。
全体の考え方は解体費用の計算方法と構造別の単価で整理しています。
浄化槽は、トイレの汚水や台所、風呂の排水をきれいにしてから川や水路へ流すための設備です。下水道の区域外にある家や、下水道が整備される前に建てられた家に多く、地面の下に埋まっているため、普段は存在を意識しないことがほとんどです。
次のような手がかりがあれば、浄化槽がある可能性が高いと考えてください。
相続した空き家などで手がかりがない場合は、解体業者の現地調査で見てもらうか、市町村の下水道や浄化槽の担当課に問い合わせると分かることがあります。浄化槽法では、都道府県知事や保健所を設置する市の長が浄化槽台帳を作ることになっているため、行政側に記録が残っている場合があるのです。
岐阜県は、浄化槽を廃止する場合は、廃止届の提出とあわせて、最終清掃、本体の撤去工事と処分が必要になると案内しています。富山県や愛知県の案内も、同じ3つの流れで説明しています。
| やること | 誰に頼むか | ポイント |
|---|---|---|
| 最終清掃 | 市町村長の許可を受けた浄化槽清掃業者 | 汚泥を抜き取り、槽内を洗浄します。消毒まで行うよう案内する自治体もあります |
| 廃止届の提出 | 浄化槽管理者(所有者など)が提出 | 使用をやめた日から30日以内。清掃記録の添付を求める自治体もあります |
| 本体の撤去と処分 | 解体業者など | 取り出した浄化槽本体は廃棄物として適正に処分します |
ここで大事なのは、清掃をする業者と、本体を掘り出す業者が別々になることが多い点です。浄化槽の清掃は、浄化槽法第35条で市町村長の許可を受けた業者しか業として行えません。解体業者がすべてを一社で請け負う場合でも、清掃の部分は許可を持つ清掃業者に依頼しているのが普通です。
浄化槽法第11条の3は、浄化槽管理者は浄化槽の使用を廃止したときは、その日から30日以内に都道府県知事に届け出なければならないと定めています。保健所を設置する市や特別区では、市長や区長が届出の窓口になります。届け出をしなかった場合は、同法第68条により5万円以下の過料の対象になります。
実際の提出窓口は、都道府県によって違います。たとえば、岐阜県は浄化槽がある市町村の役場、愛知県は市町村を所管する県民事務所等、富山県は厚生センターや富山市保健所などを窓口として案内しています。届出書の様式も自治体ごとに用意されているので、浄化槽がある市町村の名前と「浄化槽 廃止届」で調べると、担当の窓口と様式が見つかります。
愛知県は、令和2年4月1日から廃止届に清掃記録の添付が必要になったと案内しています。こうした自治体では、清掃を終えてからでないと届出が出せません。解体の日程を組むときは、清掃業者の予約、清掃記録の受け取り、届出の提出という順番を逆算しておくと安心です。
浄化槽の中には、使っていた期間の汚泥やスカムがたまっています。これを抜かないまま壊したり埋めたりすると、汚泥が地中にしみ出します。広島市は、最終清掃をせずに汚泥を流したり、汚水を地下に浸透させたりすることは、廃棄物処理法第16条に違反する不法投棄になると注意を呼びかけています。
最終清掃は、毎年の定期的な清掃とは目的が違います。汚泥を抜き取ったあとに槽の中を洗い、消毒までして、撤去や再利用ができる状態にするのが最終清掃です。清掃業者は市町村ごとに許可を受けているので、どこに頼めばよいか分からないときは、浄化槽がある市町村の役場に聞けば教えてもらえます。
岐阜県の案内では、最終清掃のあとに雨どいの配管をつないで防火用の水槽にしたり、散水用の雨水をためる槽として使ったりする方法も紹介されています。建物を解体したあとも同じ土地に住み続ける場合は、撤去以外の選択肢として検討する余地があります。
浄化槽の撤去費用は、家ごとの条件で大きく変わるため、一律の金額では示せません。見積もりの金額を左右するのは、おもに次の要素です。
| 要素 | 費用への影響 |
|---|---|
| 浄化槽の大きさ(人槽) | 処理できる人数で大きさが決まります。大きいほど掘る量と運び出す量が増えます |
| 材質 | FRP(強化プラスチック)製とコンクリート製があります。コンクリート製は砕いて運び出す手間がかかります |
| 埋まっている深さと位置 | 深いほど掘削と埋め戻しの量が増えます。建物の下や境界の近くにあると作業が難しくなります |
| 重機と車両が入れるか | 前の道が狭い、敷地の奥にあるといった場合は、小さな重機や手作業が増えます |
| 最終清掃 | 汚泥の量によって変わります。撤去費とは別に、清掃業者の料金としてかかることが多い項目です |
| 埋め戻しの材料 | 掘った穴を土や砂で埋め戻す費用です。新しく家を建てる予定があれば、地盤への影響も考えます |
建物の解体と同じ日程で浄化槽を撤去すると、重機を何度も運び込まずに済むため、別々に頼むより手間が少なくなります。反対に、解体が終わってから浄化槽が見つかると、地中障害物として追加の工事になり、費用と日程の両方が増えます。追加費用が発生しやすい場面は見積もりトラブルの記事で詳しく説明しています。
浄化槽の撤去には、本体をすべて掘り出す方法と、清掃したうえで一部を壊して砂などを入れて埋め戻す方法があります。埋め戻しのほうが工事の量は少なくなりますが、使い終わった浄化槽本体は廃棄物にあたると富山県は案内しており、地中に残すことには注意が必要です。
土地を売る予定があるなら、地中に浄化槽が残っていると、買主が建物を建てるときに地中障害物として見つかり、トラブルになることがあります。売却や建て替えを考えているなら、全部撤去を前提に見積もりを取るのが無難です。どちらの方法にするかは、土地の今後の使い方と、自治体の指導の内容を確かめたうえで決めてください。
解体業者の見積書では、浄化槽の撤去が「付帯工事」や「地中埋設物撤去」として書かれることがあります。比べるときは、次の点が書かれているかを確認してください。
岐阜県は、解体事業者に対しても、建築物を解体するときは浄化槽が埋まっていないか、埋まっている場合は最終清掃が適切に行われたかを確認するよう呼びかけています。現地調査のときに浄化槽の位置を一緒に確かめてくれる業者は、それだけ見積もりの漏れも少なくなります。見積書の項目の読み方全体は解体工事の費用内訳の記事にまとめています。
浄化槽のある家を解体するときは、建物の工事と浄化槽の手続きを一本の予定表にまとめておくと、清掃の予約や届出の期限を逃しにくくなります。順番の一例は次のとおりです。
現地調査で解体業者に位置を見てもらい、点検記録などがあれば種類や大きさも確認します。
住んでいる家なら、引っ越しや仮住まいへの移動の日程とあわせて、浄化槽を使い終える日を決めます。
市町村の許可を受けた清掃業者に最終清掃を依頼し、清掃記録をもらいます。
使用をやめた日から30日以内に、自治体の窓口へ廃止届を提出します。
基礎を撤去する段階で浄化槽を掘り出し、穴を埋め戻して整地します。
家具や家電が残ったままだと解体の着工が遅れ、浄化槽の撤去もずれ込みます。家財の片付けの進め方は解体前の残置物処分の記事に、解体後の登記は建物滅失登記の記事にまとめています。
建物を壊して同じ土地に家を建て直す場合は、新しい家の排水をどうするかで手続きが変わります。下水道が使える区域なら、下水道法第10条により、土地の所有者などは遅滞なく下水を公共下水道に流すための排水設備を設けなければならないとされています。古い浄化槽は廃止して、下水道につなぐことになります。
下水道の区域外で、建て替えにあわせて新しい浄化槽を設ける場合は、新設の浄化槽の届出と、古い浄化槽の廃止届の両方が必要になると愛知県は案内しています。古い単独処理浄化槽やくみ取り槽から合併処理浄化槽に切り替えるときは、撤去費に補助を出す市町村もあります。札幌市では、令和5年度から、合併処理浄化槽への転換に伴う既存槽の撤去費が補助の対象に加わり、単独処理浄化槽の撤去は15万円を上限としています。補助の内容と条件は年度や自治体で変わるので、着工前に担当課へ確認してください。
また、家を売るか手放すかを決めていない段階で、しばらく浄化槽を使わないだけなら、廃止ではなく「休止」の届出をする方法もあります。愛知県の案内では、再び使う可能性がある場合は休止にあたり、休止中は保守点検、清掃、法定検査の義務が免除されると説明されています。
浄化槽法では、使用を廃止した日から30日以内に届け出ることになっています。提出先は都道府県知事で、保健所を設置する市や特別区では市長や区長です。実際の窓口は自治体の案内で確認してください。
浄化槽の清掃を業として行えるのは、市町村長の許可を受けた浄化槽清掃業者です。解体業者が窓口になって手配してくれることはありますが、実際の清掃は許可を持つ業者が行います。
大きさ、材質、埋まっている深さ、重機が入れるかどうかで変わるため、一律の金額は示せません。最終清掃の費用は撤去費と別にかかることが多いので、見積もりでは両方を分けて確認してください。
汚泥を残したまま埋めることは不法投棄にあたるおそれがあります。清掃したうえで撤去するのが基本で、土地を売る予定があるなら全部撤去を検討してください。
くみ取り便槽は浄化槽ではないため、浄化槽法の廃止届の対象にはなりません。ただし、中に残ったし尿のくみ取りと、便槽の撤去は必要です。扱いは市町村に確認してください。
解体する家に浄化槽があるときは、許可を受けた清掃業者による最終清掃、使用をやめてから30日以内の廃止届、本体の撤去と処分を順番に進めます。撤去費用は大きさや材質、埋まっている深さ、重機が入れるかで変わり、清掃費とは別の項目になることが多いです。浄化槽の有無を解体前に確かめ、見積もりでは清掃と撤去の範囲、埋め戻しの方法まで確認してください。解体工事全体の段取りは解体工事の流れの記事で紹介しています。