監修者

株式会社インシュアラ 代表取締役
金松 裕基
株式会社インシュアラ(信頼の解体レスキュー)の代表取締役社長であり、同サイトの監修者を務める金松裕基氏。 建物解体、内装解体、店舗解体を主な事業とし、その豊富な経験と専門知識を活かして「信頼」のサービスを牽引しています。代表として、また業界の専門家として、安全かつ高品質な解体工事の実現に尽力し、顧客からの厚い信頼を得ています。


古い家を解体したいけれど、「更地にすると固定資産税が上がる」と聞いて踏み切れない方は少なくありません。実際に上がるのか、どれくらい上がるのか、いつから上がるのかは、住宅用地の特例という仕組みと、毎年1月1日という基準日を知ると見通しが立ちます。
この記事では、地方税法の条文と総務省、自治体の案内をもとに、解体で固定資産税が変わる仕組み、税額の試算、解体の時期による違い、建て替えのときの扱い、解体後の税負担を軽くする自治体の制度を整理します。
全体の考え方は空き家の解体、買取、リフォームの判断基準で整理しています。
固定資産税は、土地と家屋のそれぞれにかかります。家を解体すると家屋の税金はなくなりますが、土地の税金はむしろ上がることがあります。理由は、住宅の敷地になっている土地には、税金の計算のもとになる課税標準を大きく減らす特例があり、住宅がなくなるとその特例が使えなくなるためです。
この特例は地方税法第349条の3の2に定められていて、一般に「住宅用地の特例」と呼ばれます。土地の評価額そのものは変わらなくても、課税標準の割り引きがなくなることで、土地の税額が増えるという仕組みです。
古い家ほど家屋の評価額は低くなっているので、家屋の税金がなくなる分より、土地の税金が増える分のほうが大きくなりやすいのです。「解体すると税金が上がる」と言われるのは、このためです。
住宅用地の特例は、固定資産税と都市計画税の両方にあります。住宅1戸あたり200㎡までの部分を小規模住宅用地、それを超える部分を一般住宅用地として、それぞれ割合が決められています。
| 区分 | 対象になる部分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸あたり200㎡以下の部分 | 評価額の6分の1 | 評価額の3分の1 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで) | 評価額の3分の1 | 評価額の3分の2 |
税率は、固定資産税の標準税率が1.4%、都市計画税は0.3%が上限と地方税法で決められていて、実際の税率は市区町村の条例で定められます。都市計画税は、市街化区域など、市区町村が課税すると決めた区域の土地と家屋にかかる税金です。
アパートのように1棟に複数の住戸がある建物では、200㎡の枠が住戸の数だけ広がります。たとえば4戸のアパートなら、800㎡までが小規模住宅用地として扱われます。賃貸アパートを解体する場合は、戸建てよりも特例の効き方が大きかったぶん、解体後の差も大きくなりやすい点に注意してください。
イメージをつかむために、土地の評価額が1,200万円、面積が150㎡で、全体が小規模住宅用地になっている土地で試算してみます。固定資産税は標準税率の1.4%、都市計画税は上限の0.3%で計算しています。
| 状態 | 固定資産税(土地) | 都市計画税(土地) |
|---|---|---|
| 住宅が建っている(特例あり) | 課税標準200万円×1.4%=約2.8万円 | 課税標準400万円×0.3%=約1.2万円 |
| 更地(課税標準が評価額の70%の場合) | 課税標準840万円×1.4%=約11.8万円 | 課税標準840万円×0.3%=約2.5万円 |
更地の行で評価額の70%を使っているのは、住宅以外の宅地(商業地等)の課税標準は評価額の70%が上限とされているためです。試算では土地の税金がおよそ4倍前後になっていますが、これは上限で計算した場合の数字です。一方で、家屋の固定資産税はなくなるので、実際の負担の増え方は、家屋の税額を差し引いて考える必要があります。
自分の土地の評価額は、毎年届く固定資産税の納税通知書についている課税明細書で確認できます。そこに書かれた評価額と面積を使えば、同じ考え方で大まかな見通しを立てられます。
固定資産税には、税額が前の年から急に跳ね上がらないようにする負担調整措置があります。総務省の案内では、商業地等の宅地について、評価額に対する課税標準の割合(負担水準)が60%未満なら前年度の課税標準額に評価額の5%を加えて段階的に引き上げ、60%以上70%以下なら前年度の額に据え置き、70%を超える場合は評価額の70%を課税標準にする、という仕組みが示されています。
ただし、住宅用地から更地に変わった土地のように用途が変わった場合の扱いは、細かい規定によって決まります。また、総務省が示している負担調整の仕組みは令和6年度から令和8年度までのものです。令和9年度以降は、税制改正の内容によって変わる可能性があります。解体した翌年度の税額がいくらになるかは、市区町村の資産税の窓口に土地を特定して試算してもらうのが確実です。
地方税法第359条で、固定資産税の賦課期日は1月1日と決められています。都市計画税も同じく1月1日です。その年度の税金は、1月1日時点で土地に住宅が建っていたかどうかで判断されます。
| 解体の時期 | 翌年1月1日の状態 | 翌年度の土地の税金 |
|---|---|---|
| 年内(12月まで)に解体を終えた | 更地 | 原則として特例が外れる |
| 年明け(1月2日以降)に解体した | 1月1日には住宅が建っている | その年度は特例が使われる。特例が外れるのは次の年度から |
同じ解体でも、12月に終えるか1月に始めるかで、特例が使える年度が1年違ってきます。売却の予定がある場合は、引き渡しの時期や売買契約の条件ともあわせて決めてください。反対に、年明けまで待つ間に建物が傷んで危険な状態になるようなら、税金よりも安全を優先すべきです。
誰に課税されるかも1月1日で決まります。地方税法第343条では、固定資産税は登記簿などに所有者として記録されている人に課税するとされ、その人が1月1日より前に亡くなっている場合は、その日に実際に所有している人が納税義務者になります。相続した実家を解体する場合は、誰が翌年度の納税通知を受け取ることになるのかも、家族で確かめておくとよいでしょう。
家屋の税金のほうは、1月1日に家屋がなければその年度から課税されません。解体後は滅失登記をすると法務局から市区町村に通知が届きます。手続きの進め方は建物滅失登記の記事で解説しています。
古い家を壊して新しい家を建てる場合、1月1日に工事中で住宅が完成していなくても、条件を満たせば住宅用地の特例が続く扱いがあります。東京都主税局が23区向けに出している案内では、条件として次の4つが挙げられています。
同じ案内では、「工事に着手している」とは基礎工事に入っている状態を指し、地盤改良や地鎮祭だけでは含まれないとされています。また、個人名義の家を壊して法人名義で建てる場合は、所有者が別人格になるため特例は適用されないと説明されています。手続きとして、住宅用地等申告書と建築確認申請書の写しなどを都税事務所に出す必要があります。
同じような扱いは23区以外の市町村にもありますが、完成までの期限や申告の締め切りなど細かい条件は自治体ごとに違います。福岡市のように、翌年度の1月1日までに完成する予定であることを条件に挙げている例もあります。建て替えを予定しているなら、解体を始める前に土地のある市区町村へ条件を確認してください。
「解体すると税金が上がるから空き家のまま残す」という考え方には注意が必要です。地方税法第349条の3の2は、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづいて勧告を受けた特定空家等と管理不全空家等の敷地を、住宅用地の特例の対象から除いています。
つまり、管理されないまま傷んだ空き家は、建物が残っていても市区町村から勧告を受けた時点で特例の対象外になり、更地と同じように税金が上がることになります。そのうえ建物の管理責任や倒壊の危険も残るので、「残せば安い」とは限りません。空き家を解体するか残すかの判断材料は空き家は解体とリフォームどっちが得かの記事と空き家は売却と解体どちらが得かの記事にまとめています。
「壊すと税金が上がる」ことが空き家の放置につながっているとして、解体後の土地の固定資産税を減免する制度を設ける自治体もあります。千葉市は、1年以上空き家になっている住宅を除却した土地について、住宅用地特例が外れたことによる増加分を、除却の翌年に課税される1年度分減免する条例を令和8年8月1日に施行しました。対象は令和8年8月1日から令和13年1月1日までの除却です。
こうした制度は、対象になる空き家の条件、減免の期間、申請の期限が自治体ごとに大きく違います。解体してからでは申請できない制度もあるので、解体の前に、空き家対策の担当課か資産税の窓口で、使える制度がないかを確認してください。解体費用そのものの補助は、東京都なら東京都の解体補助金の一覧、神奈川県なら神奈川県の解体補助金の記事で確認できます。
解体費用の見通しを立てたい場合は、解体費用の計算方法の記事で坪単価からの概算の出し方を、解体工事の費用内訳の記事で見積書の読み方を説明しています。
小規模住宅用地の課税標準が評価額の6分の1になっていることから、そう言われることがあります。実際には更地の課税標準は評価額の70%が上限とされ、負担調整措置もあるため、単純に6倍になるわけではありません。正確な額は市区町村に確認してください。
固定資産税はその年の1月1日の状態で決まるため、年の途中で解体しても、その年度の税額は変わりません。土地の特例が外れるのは、更地の状態で1月1日を迎えた次の年度からです。
住宅用地の特例は、住宅の敷地になっている土地に適用されるものです。駐車場など住宅以外の使い方をする土地には適用されません。
特例を続けるには、住宅用地等申告書などの提出を求める自治体が多くあります。東京23区では、建築確認申請書の写しなどを添えて都税事務所に出すと案内されています。期限は自治体ごとに違います。
特定空家等や管理不全空家等として勧告を受けると、建物が残っていても住宅用地の特例が外れます。管理されていない空き家は、残しても税金が上がるおそれがあります。
解体で固定資産税が上がるのは、住宅の敷地に使われている住宅用地の特例が外れるためです。判断の基準は毎年1月1日で、年内に解体を終えると翌年度から土地の税金が上がり、家屋の税金はなくなります。建て替えなら特例が続く扱いがあり、解体後の税を減免する自治体もあるので、解体の時期を決める前に、土地のある市区町村の資産税の窓口で条件と税額の見通しを確認してください。