監修者

株式会社インシュアラ 代表取締役
金松 裕基
株式会社インシュアラ(信頼の解体レスキュー)の代表取締役社長であり、同サイトの監修者を務める金松裕基氏。 建物解体、内装解体、店舗解体を主な事業とし、その豊富な経験と専門知識を活かして「信頼」のサービスを牽引しています。代表として、また業界の専門家として、安全かつ高品質な解体工事の実現に尽力し、顧客からの厚い信頼を得ています。


家を解体したあと、法務局で「建物滅失登記」をする必要があると聞いて、自分でできるのか、いつまでにやればよいのか、費用はどれくらいかかるのかが気になっている方は多いと思います。解体工事そのものは業者が進めてくれますが、登記の申請は建物の所有者がするものなので、誰かが自動でやってくれるわけではありません。
この記事では、不動産登記法と法務局の案内をもとに、建物滅失登記の期限、自分で申請するときの必要書類と流れ、かかる費用、土地家屋調査士に頼むかどうかの判断、相続した建物や未登記の建物のときの注意点を整理します。
全体の考え方は解体工事の流れと手順で整理しています。
建物滅失登記は、法務局の登記記録から「もうこの建物は存在しない」ことを記録する手続きです。土地と建物は別々に登記されているため、建物を解体しても、そのままでは登記記録の上に建物が残り続けます。
登記記録に古い建物が残っていると、土地を売るときや、新しい家を建てて登記するときに手続きが進みません。買主や金融機関は登記記録を見て土地の状態を確かめるので、実際には更地なのに建物が登記されたままだと、まず滅失登記を済ませるよう求められます。
なお、滅失登記は登記の中でも「表示に関する登記」と呼ばれる種類で、建物の物理的な状態を記録するものです。名義を変える相続登記や売買の登記とは性格が違い、手続きも比較的シンプルです。
不動産登記法第57条は、建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定めています。解体工事の場合、「滅失の日」は建物の取壊しが終わった日と考えるのが基本です。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申請する人 | 表題部所有者、または所有権の登記名義人 | 不動産登記法第57条 |
| 期限 | 建物が滅失した日から1か月以内 | 不動産登記法第57条 |
| 怠ったとき | 正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料 | 不動産登記法第164条 |
| 申請先 | 建物があった場所を管轄する法務局 | 法務局の案内 |
過料は刑事罰ではなく、行政上の秩序罰と呼ばれるものです。期限を1日過ぎたからといって直ちに科されるとは限りませんが、法律上の義務であることに変わりはありません。期限に間に合わせるには、解体工事の契約をする段階で、建物滅失証明書をいつ受け取れるかを業者と決めておくのが確実です。
佐賀地方法務局が公開している建物滅失のチェックリストでは、添付書類として次のものが挙げられています。どの法務局でも考え方は同じなので、自分のケースに当てはまるものを確認してください。
| 書類 | 必要になる場面 | 入手先 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | すべての場合 | 自分で作成(法務局のホームページに様式と記載例があります) |
| 建物滅失証明書(取毀証明書) | すべての場合 | 建物を取り壊した解体業者 |
| 解体業者の印鑑証明書 | 建物滅失証明書に添えるもの。会社の場合は、会社法人等番号を申請書に書けば省略できます | 解体業者 |
| 解体業者の代表者の資格証明書 | 業者が会社の場合。会社法人等番号を申請書に書けば省略できます | 解体業者 |
| 住民票や戸籍の附票など | 登記記録の住所や氏名が今と違う場合 | 市区町村の窓口 |
| 戸籍や住民票など | 登記上の所有者が亡くなっていて、相続人が申請する場合 | 市区町村の窓口 |
| 委任状 | 家族などが代理で申請する場合 | 自分で作成 |
このうち、自分では用意できないのが建物滅失証明書です。解体業者の多くは自社の書式で発行してくれますが、工事が終わってから頼むと発行までに日数がかかることもあります。見積もりの段階で「滅失登記に使う証明書を出してもらえるか」「会社法人等番号を教えてもらえるか」を聞いておくと、あとで慌てずに済みます。
もう一つ準備しておきたいのが、建物の登記事項証明書です。申請書に書く建物の表示は登記記録と一致していなければならないため、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を登記記録のとおりに書き写す必要があります。登記事項証明書は法務局で取得でき、手元に権利証や固定資産税の通知書があれば、家屋番号を探す手がかりになります。
申請書の様式と記載例は、法務局のホームページ「不動産登記の申請書様式について」に掲載されています。建物滅失の様式では、おもに次の項目を記入します。
提出の方法は、法務局の窓口へ持参する、郵送する、オンラインで申請する、の3つから選べます。郵送の場合、登記が終わったあとに登記完了証や返却書類を郵送で受け取りたいときは、返送用の封筒と切手を同封します。佐賀地方法務局のチェックリストでは、返送は書留郵便(簡易書留やレターパックプラスを含む)に限られると案内されています。
申請書が2枚以上になるときは、ページのつなぎ目に申請人の印で契印をします。書き方に不安があれば、管轄の法務局で登記手続案内を予約して相談する方法もあります。
滅失登記は解体のあとに行う手続きですが、準備は解体の前から始まっています。全体の流れを順番に並べると、次のとおりです。
登記事項証明書を取り、所有者の名義と住所、家屋番号、附属建物の有無を確認します。
契約のときに、建物滅失証明書と印鑑証明書、会社法人等番号を工事完了後にもらえるかを確認します。
工事が終わったら書類を受け取り、ここから1か月以内という期限を意識して動きます。
様式に記入し、添付書類をそろえて、窓口、郵送、オンラインのいずれかで管轄の法務局に出します。
登記完了証を受け取り、必要なら登記事項証明書で建物の記録が閉じられたことを確かめます。
解体工事そのものの段取りは解体工事の流れの記事で、見積もりから完工までを8つのステップに分けて説明しています。
登録免許税法は、課税する登記を別表第一に列挙しています。建物の滅失の登記はこの一覧に含まれていないため、登録免許税はかかりません。相続登記や売買の登記のように、不動産の価額に応じた税金を納める必要はないということです。
自分で申請する場合に出ていくお金は、おもに次のような実費です。
手数料の額は、法務局や市区町村の窓口で公表されている最新の金額を確認してください。土地家屋調査士に依頼する場合は、これに報酬が加わります。報酬は事務所ごとに決められているため、依頼する前に見積もりを出してもらうのが確実です。解体業者によっては、提携している土地家屋調査士を紹介してくれることもあります。
登記記録と現在の状態がそろっていて、所有者本人が申請できるなら、滅失登記は自分で進めやすい手続きです。一方で、次のような事情があると書類集めが複雑になり、専門家に任せたほうが早く確実に終わることがあります。
| 状況 | 自分で進めやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 所有者本人が生きていて、住所も登記のまま | 進めやすい | 建物滅失証明書と申請書でほぼ完結します |
| 引っ越しで住所が変わっている | 少し手間が増える | 住所のつながりを示す住民票や戸籍の附票が必要です |
| 登記上の所有者が亡くなっている | 手間が大きい | 死亡と相続関係を示す戸籍をそろえる必要があります |
| 登記にない増築部分や附属建物がある | 専門家への相談がおすすめ | 登記記録と現地の違いを整理する必要があります |
| 平日に法務局へ行けない | 郵送やオンラインで対応可 | 時間を取りにくい場合は依頼も選択肢です |
表示に関する登記の申請を代理で業として行えるのは、土地家屋調査士です。家族が代わりに申請することは委任状があれば可能ですが、報酬を受け取って代理する資格は法律で決まっているので、資格のない業者に「登記も込みで」と頼まれた場合は、誰が申請するのかを確認してください。
空き家になった実家を解体するケースでは、登記上の所有者がすでに亡くなっていることがよくあります。佐賀地方法務局のチェックリストでは、所有者が亡くなっている場合、相続人の1人から滅失の登記を申請できると案内されています。添付するのは、所有者が亡くなったことが分かる戸籍、申請する人が相続人であることが分かる戸籍、登記記録の住所と本籍のつながりを確かめる戸籍の附票などです。相続人全員がそろわなくても申請できるのは、実家の解体を進めるうえで大きな助けになります。
そもそも建物が登記されていない場合は、法務局では滅失の登記を申請できません。古い家屋や、あとから建てた物置や離れなどは未登記のことがあります。未登記の家屋は、市区町村の固定資産税の台帳だけに載っていることが多く、取り壊したときは市区町村に家屋滅失届を出すよう案内している自治体があります。たとえば千葉市は、未登記家屋を取り壊したときは市税事務所の資産税課へ家屋滅失届出書を出すよう求めています。
建物に金融機関の抵当権がついている場合は、解体の前に金融機関へ相談してください。担保になっている建物を無断で取り壊すと、借入れの契約上の問題になることがあるためです。空き家を解体するか残すかで迷っている段階なら、空き家は売却と解体どちらが得かの記事も参考になります。
地方税法第382条は、登記所が建物の表示に関する登記をしたときは、10日以内に市町村長へ通知しなければならないと定めています。滅失登記をすると、その情報が法務局から市区町村に伝わり、家屋の課税台帳に反映される仕組みです。鹿児島市のように、滅失登記が完了すれば市役所での申請は不要と案内している自治体もあります。
固定資産税は毎年1月1日時点の状態で課税されます。年の途中で解体しても、その年度の家屋の税金はかかりますが、登記や届出が済んでいないと、翌年度も家屋に課税されてしまうおそれがあります。登記が遅れそうなときは、千葉市のように家屋滅失届の提出を求める自治体もあるので、市区町村の資産税の窓口に確認しておくと安心です。
建物がなくなると、土地にかかる固定資産税の住宅用地の特例も外れることがあります。家屋の税金がなくなる一方で、土地の税金が上がる場合があるので、解体の時期を決める前に解体後の固定資産税の記事で仕組みを確認しておいてください。
不動産登記法では、正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象になると定められています。また、登記記録に建物が残ったままだと、土地の売却や新築の登記の手続きが進まなくなります。
登記の申請をするのは所有者です。解体業者が出すのは、申請に必要な建物滅失証明書と印鑑証明書などです。代理で申請してもらいたいときは、土地家屋調査士に依頼します。
期限を過ぎても申請は受け付けてもらえます。過ぎたことに気づいた時点で、できるだけ早く書類をそろえて申請してください。
法務局のチェックリストでは、所有者が亡くなっている場合は相続人の1人から滅失の登記を申請できると案内されています。所有者の死亡と相続関係が分かる戸籍などを添付します。
建物の滅失の登記は、登録免許税法で課税対象とされている登記に含まれていないため、登録免許税はかかりません。書類の取得手数料や郵送費などの実費はかかります。
登記されている建物や附属建物であれば、取り壊したときに滅失の登記が必要です。登記されていなければ法務局での登記はできないので、市区町村の資産税の窓口に扱いを確認してください。
建物滅失登記は、建物がなくなった日から1か月以内に、所有者が管轄の法務局へ申請する手続きです。登録免許税はかからず、建物滅失証明書と申請書がそろえば自分でも申請できます。所有者が亡くなっている、住所が変わっている、登記にない建物があるといった事情があると書類が増えるので、早めに登記記録を確かめ、解体業者には契約の段階で証明書の発行をお願いしておいてください。解体の費用そのものを確かめたい方は、解体費用の計算方法の記事もあわせてご覧ください。